【Java言語】オブジェクト指向(概念と実体)
参考 An introduction to c++ Programming and Object Oriented Programming with Tutorials and Hands-On Examples by NATHAN METZLER
1.オブジェクト指向プログラミングの概要
オブジェクト指向プログラミング(略してOOP)では、データに重点が置かれ、手順には重点が置かれていません。
OOPは、ひな形(クラス)に定義されたデータ(属性・フィールド)とこのデータにアクセスする関数(アクセッサ・メソッド)、及び機能を実現する関数(振る舞い・メソッド)を含む実体(インスタンスorオブジェクト)の考え方を中心に展開します。クラスで定義されたフィールドとメソッドをクラスのメンバーと呼びます。
インスタンスは参照型の変数を通してメソッドやフィールドを利用することができます。これを「概念を定義したひな形から、状態と機能(属性と振る舞い)を持つ実体を作り出す」と、表現します。
オブジェクト指向プログラミングは広大なトピックであり、すべての概念をカバーするには一朝一夕には叶いません。このセクションでは、OOPの基本を学びます。
1.1クラスとオブジェクト
クラスは、データを保持する変数(フィールド)と、機能を表す関数(メソッド)を含んでいる参照型の定義体です。クラスは単なるデータ形式と機能の定義であり、それ自体にデータを含めることはできません(実体がデータを保持します)。
メソッドは、機能を実現すると共にクラスのフィールドにアクセスするためにも使用されます。これをセッターメソッド、ゲッターメソッドと呼びます。
インスタンスは、クラスで定義された独自のデータとメソッドのセットを持つ実行主体です。データメンバーは属性とも呼ばれます。
この概念をよりよく理解するために、例を見てみましょう。
Carというクラスを考えてみましょう。車を考えるときに頭に浮かぶのは、メーカー、モデル、エンジン排気量、燃料の種類など、特定の特性です。Carクラスの各インスタンスは、独自の属性セットを持つ異なる車です。つまりCarクラスから作られる実体としての車にはBMWやAudiやFord等いろいろあるということです。これを図で表してみましょう。
次の図を参照してください。
この図からわかるのは、まずCarと呼ばれるクラスがあるということです。Carクラスには、製造元(Manufacture)、形式(Model)、および排気量(Displacement)の3つのデータがあります。このクラスの3つのインスタンスは、Carオブジェクト1、Carオブジェクト2、Carオブジェクト3として作成されます。
各オブジェクトは、製造元、モデル、および排気量の独自の値を持つ異なる車です。この例をプログラマーの観点から見ると、Carクラスは3つのデータを持つと認識することができます(製造者、モデル、排気量)。これらのデータにアクセスするために、setData()やdisplayData()などのメソッドを用意して、setData()で各データを設定し、displayData()で各データの値を表示させるように設計する必要がありそうです。
この設計をクラス図で表すと次のように表現できます。
【クラス図】
----------------------------------------------------------------//クラス定義---
Car
----------------------------------------------------------------//データ定義---
- manufacture:String
- model:string
- displacement:int
----------------------------------------------------------------//メソッド定義
+ setData(man:String,mod:String,dis:int):void
+ displayData():void
------------------------------------------------------------------------------------
-private
+ public
# protected
1.1.1クラスとオブジェクトの宣言
クラスは、あらゆる関数からアクセスできるように、public(つまり公開)に宣言する必要があります。クラスを宣言する構文は次のとおりです。
【構文】
public class クラス名 {
//データ定義
//メソッド定義
}
【ソースコード例】
public class Car {
//データ定義
private String manufacture;
private String model;
private int displacement;
//メソッド定義
public void setData(String man,String mod,int dis){
}
public void displayData(){
}
}
クラスメンバーは、パブリック、プライベート、およびプロテクティッドの3つのアクセス修飾子の下で宣言できます。プロテクティッドは少し進んだトピックなので、パブリックとプライベートを見ていきます。
パブリックメンバー:
パブリックメンバーは、プログラムのどこからでもアクセスできます。パブリックメンバーにアクセスするためのメソッドは必要ありません。
プライベートメンバー:
同じクラスのメソッドのみがプライベートデータにアクセスできます。メソッドがプライベートとして宣言されている場合、同じクラスのメソッドのみがプライベートメソッドを呼び出すことができます。これは、オブジェクト指向プログラミングにおけるデータ隠蔽の非常に重要な概念です。
注:パブリックおよびプライベートの宣言としての制限はありませんが、通常、データ(フィールド変数)はプライベートとして宣言され、メソッドはパブリックとして宣言されます。これは、オブジェクト指向のカプセル化の概念として「データメンバーにアクセスする場合は必ずアクセス用のメソッド(アクセサメソッド)を利用する」という考え方があるためです。
メソッドがプライベートに宣言されてしまうと、他のクラスからそれらのメソッドにアクセスする方法がなくなってしまいます。一方でデータメンバー(フィールド変数)がパブリックにされている場合、他のクラスからそのデータに直接アクセスできてしまいます。これではアクセサメソッドの必要もなくなってしまいますし、カプセル化の概念も崩れてしまいます。
上記の例(Carクラス)では、Manufacturer、Model、Displacementがプライベートデータメンバーとして宣言されていおり、setData(),displayData()はパブリックメソッドとして宣言されています。
以上の考え方は単なる定義であり、データに対する操作はこれまで行われていません(まだ説明していません)。データを操作するにはクラスのインスタンスとなるCarクラスのオブジェクトを作り出す必要があります。オブジェクトに設定される独自のデータとメソッドのセットでオブジェクトの操作が可能になります。クラスのオブジェクトを作り出すには、次の構文をmainメソッド内に記述します。
【構文】
クラス名 参照型変数名 = new コンストラクタ名();
【ソースコード例】
Car c1 = new Car();
Car c2 = new Car();
Car c3 = new Car();
コンストラクタは、クラスと同じ名前を持つ特別な種類のメソッドで通常はインスタンスのデータメンバーを初期化するために使用されます。new演算子でクラスに定義されたコンストラクターが呼び出され実体化されると考えて構いません。つまりコンストラクターが呼び出されるのは実体化の際の一度だけです。
コンストラクタは他のメソッドと同じようにオーバーロードできますが、値を返すことはできません。ですからvoid宣言は行いません。つまり戻り値の宣言がされていない、クラス名と同じ名前のメソッドはコンストラクタです。仮にプログラム内にコンストラクタを記述しなければ、コンパイラが自動的に何も処理を行わないコンストラクタを追加してくれます(もちろんプログラム内に記述すればそちらが優先されます)。
クラスの実体化には参照型の変数を宣言します。Car c1 = new Car();ステートメントは、Carクラス定義で定義された独自のデータメンバーとメソッドのセットを持つCar型のインスタンスc1を作成します。同様にしてc2,c3も作成されます。new演算子の後にはコンストラクタを記述します。インスタンスのメソッドにアクセスするには、ドット(.)演算子を次のように使用します。
【構文】
参照型変数名.メソッド名
ドット(.)演算子を使用してアクセスできるのはパブリックメンバーのみです。
setData()は、インスタンスごとに個別に呼び出す必要があります。メソッドは3つのパラメーターを受け入れるため、3つの引数を指定する必要があります。
【ソースコード例】
c1.setData( "Audi", "Q5",2000);
c2.setData("BMW","3シリーズ",2000);
c3.setData("フォード","エンデバー",3200);
displayData()は引数はありませんので次のように呼び出すことができます。
【ソースコード例】
c1.displayData();
c2.displayData();
c3.displayData();
これらの概念をすべて組み合わせて、完全に動作するJavaプログラムを作成してみましょう。
プログラムを作成しコンパイルと実行を行って出力を確認してください。
【Car.java】
【実行結果】